BCGが読む経営の論点2023【書籍紹介】

毎年11月頃になると、ビジネス書を発行する出版社より来年以降の経営の論点をまとめた書籍が、複数発売されます。
今回は、その中からボストンコンサルティンググループがまとめた、「BCGが読む経営の論点2023」をご紹介します。

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この本では冒頭、経営におけるシナリオプランニングの必要性と有効性を示し、日本でもシナリオプランニングによる中長期の事業計画が進んできたとしています。
日本ではあまり浸透していなかったシナリオプランニングによる事業計画の立案と言うのが、ここにきて採用されるようになってきた理由として、過去10年間において日本の経営者の意識に大きく影響を与える4つの変化の矢が、互いに交錯し中長期のシナリオを考える姿勢を促してきたと指摘しています。

その変化とは、第一にデジタル革命としています。
特にディープラーニング技術がAIの進化に大きく貢献したとしています。
画像認識、音声認識の精度が飛躍的に向上し、それによってこれまでにない不連続な変化が到来する事がビジネス領域において語られるようになったとしています。

第二に地政学リスクの高まりとしています。
冷戦構造の崩壊以後、新自由主義とグローバリゼーションの高まりのともに、自由貿易が進展し世界の垣根が無くなるような未来を創造していましたが、ブレグジットなどに象徴されるようにポピュリズムは台頭し、むしろ世界の分断化は拡大しています。
従来であれば政治リスクというものは国別、地域別で考えれば良かったのですが、世界のグローバリゼーションの進展により、世界のトレンド全体で考えてリスクと機会を見極める難しい時代になってきました。

第三は気候変動、脱炭素の動きです。
これまでは地域的、国内的な動きしかなかったものが、全世界的なうごきとなって意識され始めたことと、これが工業やエネルギーだけでなく、農業、サービス業等の全産業に対して影響をおよぼすようになってきています。
国の規制や産業シフトの方針に関わるような概念に成長していることは、非常に注視して行かねばならない事象です。

第4は新型コロナウイルス感染拡大です。
現在が、コロナを封じ込める最終段階なのか、ウィズコロナの生活習慣、働き方が一般化する時代の幕開けなのか、誰にもわからない状態です。
かつて世界は、例えばペストの流行が人類に恐怖をもたらし、欧州の歴史を変えたことを経験しています。また歴史を振り返れば、ペスト以外の感染症も社会に大きく影響を与え、その病気の恐怖を、人々の多くは知っていました。
しかし専門家をのぞき、新型コロナウイルス感染拡大の脅威が、ここまでグローバルレベルで展開することを多くの人々は想像できませんでした。いわば過去から学べず、また過去の延長線で物事を考える事ができない状態のまま、事態は進行し対処できない状態となりました。
このパンデミックから学んだ事は、あらゆる不確実性の可能性を排除することなく、将来の幅でとらえて、起こるか起こらないかではなく、起こった際にどう対処したらいいのを考えるということ、これを強い教訓をコロナは与えたと、本書は指摘しています。

経営を考えるときに、現在、過去、未来を俯瞰して経営環境を理解しておくことは、重要です。
将来のシナリオ予測もないまま、経営戦略は考えられません。
その意味で本書は、今後の経営においての重要論点について解説をしている本です。

10の変化-陸の移動、物流、食、医療、エネルギーサービス、学びの在り方、通信と放送、決済、都市空間、仮想空間の各変化を項目としてあげ、それぞれについて解説しています。
読んで印象的だったのは、学びの在り方の変化でした。
リスキリングなど言われていますが、これが会社経営に大きく影響してくることには、非常に視点が無かったので、べんきょうになりました。

また、これらの変化の根底には脱炭素、SDGs、web3.0と言った、いままでに無かった21世紀に現れた概念や技術の広がりがあり、こういうところで変化をおよぼしているのかと、非常に勉強になりました。

来年以降の経営を考えるときに、いちど読まれてみてはいかがでしょうか。
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